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たったひと夏を一緒に過ごした相手だけれど、彼以上に愛せる人なんて 想像も出来ない。
それ以前に、彼以上が存在したのだとしても、叶うはずがないのだ。
―――私は、あの人と結婚するのだから。
書類と指輪に縛られて、私は一生あの人のモノ。
あの人は、私のことを大切にしてくれる。きっと、幸せになれる。
だけど、だからこそ悲しくて、辛い。
「……約束しよう。だから、悲しい顔しないで」
彼の言葉に、いつの間にか寄ってしまっていた眉間のシワにハッとした。
それを見て、彼は『可愛い』と笑う。
「……約束?」
「そう、約束。4年前だって約束したから。だから俺は記憶を取り戻しても、ヒナと再会できたんだと思うんだ」
私は、あの人のモノになってしまうのに。
「だから、約束。またココに逢いに来て」
「でも……」
彼は、もう消えてしまうのに。
「心から幸せだと思えたその年のひまわり咲く頃に、逢いに来て」
私は微笑んで、頷いた。
それは優しくて、叶うはずのない約束だってユウは分かっているのだろうか。
「ココに居るから。ヒナが幸せだって報告に来てくれるその日まで」
―――ユウが居ない幸せなんて、考えられないのに。
ユウは、消えた。
ひまわりを揺らす、夏風と共に。
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