序章

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「ああ、なんだ隼人(ハヤヒト)か」 隼人とは高校からの付き合いだ。 とにかく目立ちたがり屋で派手なヤツだ。 傷みきった髪を黄緑色に染めていて、今時肌は焦げ色。 どこのキチガイだという風貌だが悪いやつじゃない。 私服はアロハシャツが似合うと思うぞ。 「八月にさぁ、舞ちゃん誘ってー、俺とお前、あと俺の彼女で海いかね?海!」 隼人の考えることはいつも急だ。 高校の時からそうだった。 それをいさめるのが俺の役割。 冷静沈着とまではいかなくても、リアル思考な俺は、どうしても物事を理屈で考えてしまう。 その点、隼人は物事を理想だとか信念だとか、そういった不確定な要素で動いている。 真逆な俺達はわりと巧くいってるのだ。 「んなこと言ったって、旅費はどうすんだよ」 「だいじょーぶだいじょーぶ。格安だから」 と、ここからはリアルな金銭相談になるので略させて貰いたい。 聞いても面白いもんじゃない。 寧ろ眠たくなるほど緻密な計画だ。 「ふむ、いいな。学生には有難いプランだ。隼人にしてはよくやった」 隼人は俺の嫌味をもろともせず、俺の肩をバシバシ叩いてくかかと笑った。 「そうだろそうだろ、意外と俺頑張っただろ!」 まあ、こいつは頑張り屋なのだ。 彼女の為に大学進学を決め、無謀だと言われながらも実際に受かったのだから。 彼女の為なら死ねる!とか言うだろう。 「じゃ、舞に相談しとくよ」 俺は次の授業もあったので、こんなところで立ち話している暇はまるで皆無なのだが。 隼人に軽く挨拶をして別れる。 ダッシュで行けば間に合うだろうか。
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