海の街

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レールの繋ぎ目を走る度に、電車は音をたてる。 俺は窓の外をぼんやり見ていた。 もう大分住んでるところから離れてきた。 景色がだんだん変わっていく。 とにかく田舎としか言いようがない。 だが都会っ子な俺にはその田舎さが逆に物珍しい。 だけどテンションはあがらない。 ボックス席だから仕方なく向かい合って座っているカップル――隼人とその彼女。 こんなのが同じ大学だとは思いたくない、自分の学力を疑ってしまう。 先ほどから終止いちゃいちゃいちゃいちゃ。 段々見てるこっちが胃もたれしてきた。 人はこういうのをバカップルと言うんだろうなあ。 ああ 舞がいれば。 さっきからこんなことばかり考えてしまう。 いかんいかん、心を入れ換えなくては。 その為の旅行なのだけど、こう目の前にバカップルがいては忘れられる訳が無い。 なんでこんなタイミングで別れるんだよ、俺ら。 この後でいいじゃんか。 舞はというと、キャンセル料をきっちり払って来なかった。 まあ当たり前だが、自分が哀れすぎる。 溜め息が止まらない。
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