一粒目

4/13
154人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「あっ、そうだお父さん、聞いてよ」 そう言って運転席に乗り込んだ時だった ─────キキィーッ! 本当に一瞬で 「柚鶴…!」 私を抱き締めるお母さんの温もりを最後に感じた そして、私の目が覚めたのは病院だった 「…」 いろんな音が鮮明に感じる 心電図の音が、誰かの話し声が 「先生!目が覚めました!」 突然聞こえた声、それに続いてぞろぞろ入ってくる人 「大丈夫?」 この人は医者だろうか でも私はそんなことどうでもよくて 「お母、さんは… お父、さん…は」 意識が朦朧とする 医者の言う事なんか 分かっているはずなのに 私は、期待したんだ 意味の無い期待を そして予想通り、医者は首を横に振った
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!