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その時だった。
「棗?棗、いるんだろ?」
それは、近所に住む男性の声。
棗の鼓動は、速くなる。
だが碧にとって、それはチャンスだった。
「棗さん、お客さんだよ?」
碧はニヤリとして、棗の顔を見た。
「…っ、これをほどけっ…」
「イヤだよ。そのまま出ていけば?仲良い人でしょ?」
すると玄関先から、さらに声がした。
「棗?どうした?家に上がるぞ?」
棗の顔からは、冷や汗が流れる。
こんな姿を見られたら…
すると、碧はわざとらしく、言った。
「棗さん、お願いしたらオレ代わりに出てくよ?それとも見られたい?」
この時の棗に、選択の余地はなかった。
「碧…頼む」
「わかった。後が楽しみだな」
碧は、玄関へ向かい応対をした。
「こんにちは。すみません、今、棗さんは手が離せないらしくて…」
「あ、そうなの。君は確か、甥の碧くんだったね。
わかった。じゃまた明日に来るよ」
「はい、伝えておきます」
パタン…
ドアが閉まる音に、ホッとする棗。
続いて、カチャとカギをかける音がした。
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