旅の出来事

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――全く不幸なもんだ。 俺は車に乗り込み、溜め息を吐く。コンビニで栄養ドリンクと珈琲を買った時に引いたクジ。ハズレは無い筈なのだが…… ――ハズレだろ…これは と手にした紙パックにもう一度溜め息を吐く。ただでさえ貴重な土曜日なのに仕事で潰されるのだ。冗談じゃ無い……そんな想いも呑み込もうと、液体を嚥下する。 「マズっ」 水で薄めた抹茶の味に甘味が含まれたような味だ……やっぱり抹茶豆乳ラテとか名前的にキワモノが美味しい訳無いか……仕方なく一気に吸い込む。その後、同じく甘い珈琲を飲む。口の中が甘ったるくて鬱陶しい。舌打ちして、俺は車を走らせた。 一時間程して目的地の小田原に漸く着いた。新任の国語教室である俺は先輩から、「歌舞伎教室の準備で使いたいモノあるから」と買い物を頼まれているのだが、とりあえず、蒲鉾でも買おうかと、蒲鉾屋で車を降りた。 蒲鉾を買って、さて、仕事に戻るか。と思った時、俺の車の近くで子供が泣いていた。最近、CMでエコカー減税がうんたら言ってる子供にとても似ているな…なんて思いつつ、基本的に子供が好きな俺は、しゃがみこんで 「どうした? 俺に言ってみな」 「ひっく…お母さんと………ひぐっ」 どうやら迷子のようだ。 「…君、名前は?」 「ひくっ…うっ…」 「よしよし、じゃあ、お母さんが行きそうな場所はあるかな?」 「…う、外郎…ひくっ」 「……もしかして、外郎屋かな?」
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