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「つーかアイリス、俺を蹴り飛ばさすためだけに呼び止めたのかよ?」
俺は立ち上がり、ジーパンとポロシャツについた土埃を払いながら、不機嫌な声をあげた。
そうだとしたら、本当にタチの悪い奴だ。
まぁ、アイリスなら有り得るけど…
すると、アイリスはどういうわけか顔を赤くして、そっぽを向きました。
「…アップルパイ1個」
「へ?」
アイリスは俺に背を向けると、車の車庫へと歩いて行き、同じくサビだらけのシャッターをガラガラと上げました。
「あたしの朝飯だ!ドルシェベーカリーのアップルパイ1個、買ってくれたら乗せてやる」
そこには、ずっと俺が乗ってみたかった、アイリスの黒いミニカーがありました。
「マジで!?」
「うるさい、早く乗れ」
「ありがとう、アイリス!!」
アイリスに促されて、俺は早速助手席のドアに手を掛けようとしました。
「はぁ~、これで朝っぱらから大汗かかずにすむよ~…」
言った瞬間、例の魔石兵器が俺の喉元に突き付けられました。もちろん、布は巻いてありますが。
血の気が引いて、心臓がバクバクいいます。どーすんの、間違って何か魔法でも発動しちゃったらお陀仏じゃないですか…
「あ、アイリス…?」
「言い忘れた。そこはコイツの席。お前は後ろだ」
目が据わっていました。
「わ、わかったから、そいつを下ろして?ね?」
すっと、武器が下ろされました。
恐ろしい娘です…
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