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「…」
恐ろしい言葉に固まっている俺と、ミラー越しに目が合って、アイリスはくすりと笑った。
「大丈夫だ。こんな『リトリア共和国』の中心部まで『インナーワールド』の連中が侵入してくる事は無ぇよ。それに…」
「それに?」
アイリスは、右手の親指で俺のライフルを指しながら言いました。
「いざとなったらお前にも、それがあるだろ?」
「…、ちょっと待って、絶対ヤダ、人を撃つなんて無理むりムリ」
「あっはっはっは…!」
「笑えねぇっつーの!」
俺は心底楽しそうに笑うアイリスへ呆れた視線を送ると、彼女から目を離して、再び窓の外を眺めた。
ちょうどビル群が途切れて、ぱっと草原が広がったところだ。
戦前はこの辺りも『ノートル』と言って、先進国の中では有名な穀倉地帯だったらしいが、大戦中に戦場となった事で土地が荒れ、戦後も、凶暴化する野性動物が増えたせいで耕作が放棄され、現在では所々に低木が生えるだけの『ノートル草原』へと変わってしまった。
この『ノートル草原』でのハンティングも、なかなか面白い。見通しが良いので、俺の得意な遠距離射撃の腕が、存分に発揮できる。
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