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「アイリス…朝っぱらから10年来の友人に、それは無いんじゃないか?」
俺は呆れ顔で返すしかなかった。
「あ? 名前が不吉なんだよ。『ロスト』って、縁起でも無ぇ…」
「それは俺じゃなく、名付け親の総長に言ってくれって何回も言ったよな? 傷つくんだよ、泣くぞコラ」
アイリスは今年で20歳になるというのに、その身長は俺の鳩尾の下くらいまでしかない。
可愛らしいのは姿だけではなく、声音にも何処か幼さが残るのだが、それに似合わず、口調は至って伝法だ。
彼女とは長い付き合いになるが、実は彼女も、先程述べた『何をやっているのか素性の知れない連中』の一人。
彼女の小脇には、その身長にはおおよそ不釣り合いな程に長く、細い…軽く2mはある、丁寧に布に巻かれた荷物が抱えられている。
実はこれ、十字槍…れっきとした刃物だ。
しかも、ただの十字槍ではなく、『インナーワールド』製の魔石兵器だというから、その物騒さは俺のライフルの比じゃあない。
「…で、今日は何処に行くんだ?」
俺はアイリスを促して、階段へ向かいながら話し掛けた。
「アーテルダム廃墟群」
アイリスはぶっきらぼうに答える。
「おっ?じゃあフリッツガルドを通るよな?乗せてってく」
「死ね」
「せめて最後まで聞けよ!」
俺はアイリスに突っ込むと、1階へ降りるべく階段へと足を下ろした。
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