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「あの……」
「ん?」
「わざわざ拾ってくださってありがとうございました。」
「俺たいしたことしてないよ、しかもぶつかったの俺だし。」
「いえ、僕もちゃんと前を見てれば良かったんです。すみません。」
「君、実習生?」
「…はい。あっ、プレートですか?」
「そうそう、じゃなきゃ同じ部署じゃない人が新人か分かんないよ。」
「ですよね。僕、もう行かなきゃいけないんで行きますね。」
「そっか、他の人にはぶつからないように気をつけてね。」
「はい。じゃあ、失礼します。」
実習生の男性社員はまた重たそうに書類を持ってどこかへ行った。
顔、よく見えなかったなぁ。
名前も聞いてないし…気になるから聞いてみよっと!!
あと、荷物も持ってあげよう!!
俺は実習生を追いかけた。
「俺半分持つよ。」
「えっ、いいんですか? 」
「うん、なんかちょっと心配だし。」
「ありがとうございます。」
「どこまで持ってくの?」
「確か…第2会議室です。」
「すぐそこだから持ってくよ。」
「すみません、本当に…」
「いえいえ。」
書類の上半分を持って分かったこと、
俺より身長が低い
小柄
眼鏡をかけてる
黒髪
そして、美男子
なんていうか、雰囲気も穏やかな感じだし顔はかなり整ってて、正統派イケメンかな?
これは絶対モテるんだろうな~
まっ、こういうのには大抵裏は女好きだけど。
顔赤いけど、熱でもあんのかな?
そんなことを考えてるとあっという間に目的地に着いてしまった。
幸い扉は開いてたから2人で入り、机に書類を置く。
「先輩、ありがとうございました。」
「ん、いいよこんくらい。君、名前聞いてもいい?」
「僕…ですか?」
「うん。」
自分のこと僕って言って母性本能とかくすぐる系かぁ、年上キラーっぽい。
「加藤成亮です、…先輩は?」
「俺?俺は小山慶一郎、よろしく。ちなみに部署は営業部。」
「よろしくお願いします!!先輩。」
“加藤成亮”と名乗った彼は、『先輩』なんて言った後にはにかんだ。
この時俺は、『可愛い』って思ってしまった。
さっきまでの女好きのイメージがまるでなくなる。
「おい小山!!」
「ヤベッ、ごめん加藤くん。部長呼んでるから行くわ。」
「お気をつけて。」
「じゃあまたね。」
バタンッ
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