Love

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近藤は目を見開いた。 聞き間違いじゃないかと、自分の耳を疑う。 「長井、敏郎……!?」 「どうする? 殺せるか?」 組頭は近藤を試すようにあざ笑う。 近藤はすぐに返答出来なかった。 カイの仇は、そんなに強大な敵なのか……。 簡単に倒せる敵ではない……、しかし。 「殺すことが出来るか、じゃねぇんだよ。 殺してやるよ。どんだけ時間がかかるかはわからねぇ。 だがカイの為なら、オレは絶対に出来る……!」 「フッフ……。お前、気に入ったよ。 オレの組に入れ。組に入れば資金も人間も貸してやる。 長井との接点もある筈だ……。 長井を殺して、海の仇を取ろうじゃねえか!」 近藤は迷うことなく、組頭に頭を垂れた。 長井は全国の暴力団をその権力や金で束ねていた。 小渕もその傘下の1つである。 全ての組は長井の思い通りに動かされ、長井に逆らう組は長井に逆らえない組によって制裁される……。 そんな負のスパイラルが発生し、抜け出すことが出来ないでいた。 小渕は密かに長井を倒し、その呪縛から解放される計画を立てていた。 しかし計画は内部からリークされ、小渕は長井から制裁を受けることになる……。 それが、組頭の娘の殺害だ。 長井は丸田に、小渕海の殺害を指示した。……逆らったことの見せしめとして。 マスコミが小渕海の死を大々的に報じたのは、長井の小渕に対する警告だ。 海の死は小渕にとってかなりのダメージであり、長井への反抗心を喪わせるには十分だった。 しかし……後の長井にとって、近藤が組に加入することは計算外であっただろう。 一月後の8月。 小渕海殺害事件を皮切りに、小渕組と丸田組の大抗争が起こる。 丸田の幹部達は致命傷を負い救急搬送、その後逮捕され、組は壊滅。 下っ端の一部は小渕に寝返り吸収された。 近藤はこの件の活躍が組頭に認められ、下っ端をまとめる程の幹部へと昇格する。 しかし結局カイに直接手を下した人物は分からず仕舞いだった。 憎むべき丸田は消え、近藤の怒りの矛先は完全に長井へ向いた。 近藤は本格的に、長井を絶望の淵に落とし殺害する計画を、長期目線で立て始めていた。 _
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