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「近藤が辞めた!?」
俺が叫ぶと、部署の誰しもがこっちを振り向いた。
その情報源の部長が眉を潜めて言う。
「……声がでかいぞ糸原」
「すいません……。
しかし、どうして急に?
先週まで普通に働いてたじゃないですか……」
そして今週から突然音信普通になり、今日の朝ようやっと会社からの電話に応答したらしいが。
「知らん!
あの男電話に出るなり突然暴言を吐きおったわ。
『カイシャ? んな××辞めてやる! この××部長、さっさと××××……』」
「すいません、もう結構です……」
あまりにも汚い言葉が飛び出し、これ以上部長をイライラさせてはいけないと思い場を離れる。
俺は誰もいない休憩室で、近藤の携帯電話に電話を掛けた。
「……」
……俺のプライベートでもダメか。
やっぱり、まさか、突然辞めた理由って……。
『いざとなったら駆け落ちするって言ってたくらいで』
『……ま、オレが急に会社辞めたらカイと上手くいったって思ってくださいよ』
……まさか本当に駆け落ちしちまったのかよ……。
にしても、一言くらい俺に相談してもいいじゃねえか。
俺……、やっぱりあいつにとって、相談相手じゃなくてただの愚痴の吐け口だったってことなのか……?
「親父……、飲み過ぎだろ。酒臭い」
日付が変わってから帰った俺に呆れた顔で高俊は言ったが、それから思い直して心配な顔になった。
「……何かあったのか?」
「……まあ、大人にも色々あるんだよ」
俺は高俊に支えられながら和室に行き、大の字になって畳に倒れこんだ。
「ごめん高俊……、明日出張行ってくる……。
つっても、日帰りで」
「土曜出張か……、大丈夫か?
二日酔い」
「……うん。すっきりさせてくる、色々」
「……」
そのまま俺は畳の上で寝てしまった。
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