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20×6年10月ーー
「ぞ、増税……!?」
食事中俺と高俊は、テレビのニュースに釘付けになった。
「し、しかも11月から施行って、随分急だな……」
「……また長井の悪行か。
そろそろいい加減にして欲しいな。641条とか総理公邸建て替えとか色々、やり過ぎだ」
高俊がテレビの中の長井総理を睨みつけながら言った。
「ま、まあ長井さんにも色々考えがあるんだろ。
増税も……、俺たちより金銭的に大変な人の為だろ? きっと。
それに役立つと思えば、まあ、苦じゃねえよ」
「それが本当にその人たちの為に使われていればいいがな」
「……変なこと言うなよ。
そんなの……、馬鹿みたいじゃねーか、国に金を注ぎ込んでるのが」
「……。冗談だよ。
ただ、親父の働いた金が見ず知らずの上級国民達に、吸い取られてると思うと腹が立つ」
高俊はそう言って、再び自分の箸を動かした。
高俊は、心の奥底から長井政権を嫌っている。
「高俊」
「……ん」
「お金は、大丈夫だから。
お前の好きな大学行けるように貯めてる。
増税したって関係ねーよ。気にすんな」
「……まだ、何がしたいかハッキリしないんだ」
「そうか。まあ悩む時間はもう少しあるからな。行きたいところに行けよな」
「……ああ。いつか、借りは返すから」
「親に借りとか返さなくてもいいんだよ」
その時、互いの箸が最後の肉を取ろうとぶつかりかけた。
「……譲れよ、息子に」
「嫌だ。太るぞお前」
「あんたの方が体脂肪多いだろ!」
「うるせえ! お前借りを返すとか言ってたのは何だったんだよ!」
「それとこれとは話は別……」
ピンポーン
玄関チャイムが唐突に鳴り響いた。
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