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「ぬあああ! こ、こんな時に……」
高俊はニヤリと笑みを浮かべた。
「行って来いよ、早くしないと冷めるだろ……?」
「お前食うなよ! 絶対食うなよ!」
「あぁ。肉が逃げないように見張ってるよ」
「肉が逃げるかよ!?」
客は宅配のお兄ちゃんだった。
「ありあとやしたー!」
兄ちゃんが去ってから俺は受け取った宅配荷物を見て、不思議に思う。
差出人がない。
「ん……?」
一瞬気にはなったが、取り敢えず荷物を適当に置いて食卓に戻る。
……肉がない。
「たかとし~! このクソ野郎ー!」
「悪い。どうやら余所見していた間に肉が逃げたらしい」
「だから肉が逃げるかよ!
このぉ、許さんぞ! 食べ物の恨みは怖いんだからなあああ」
「おい食事中だぞ! そこは、やめ……っ、
あはは、はははは」
そうか……、こいつがもし東京の大学とかに行っちまったら、暮らせるのもあと半年切ったんだよな。
俺もちゃんと子離れしないと、こいつも親離れしてくれないだろう。
「……なぁ高俊」
「何だよ」
「受験全部終わったら、ディズニーランド行くぞ」
「え」
「覚えてるか? ずっと行くって言ってたもんな」
「あぁ。もちろん」
……これで家族でやり残したことがないように、すっきりと、互いに新たなステップへ。
食事の片付けが終わったところで、俺は先程受け取った荷物が気になった。
……やっぱり差出人不明な上中身が何か分からないのが怖い。
……いや、書き忘れただけかもしれないしな!
開けないのも、申し訳ないしな!
俺は恐る恐る箱を、高俊のいない場所で開ける。
「な、何だこれ……」
それはある意味玉手箱のように、俺の運命を大きく変える物だった。
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