1007人が本棚に入れています
本棚に追加
『糸原高成
このメールを確認したら「確認した」と返信しろ
今後ワタシの目的のために貴様に動いてもらう
無視したり逆らったり警察に通報したりすればお前の息子を殺す
ーーCONDORーー』
メールは句点のない、無慈悲な内容だった。
「うわ……、うわああ」
あまりの恐怖のあまり、俺は情けない声を出すしかなかった。
な、何だこれ。
無視したら高俊を殺す?
じょ、冗談だろ?
何だよこいつの、コンドルの目的って。俺に何をさせる気だよ。
俺は震えながら、メールを慎重に打ち返す。
『確認した。
何をすればいい?』
返事はすぐに帰ってきた。
『内閣総理大臣長井敏郎の殺害
貴様には国会に侵入し長井を殺してもらう
出来なければ代わりに息子が死ぬ』
「冗談だろ……!」
俺は涙声になって、狼狽えた。
俺はてっきり、金を要求してくると思ったのに。
俺は箱の中の銃に目が行った。
一丁の銃を、親指と人差し指で恐る恐る持ち上げてみる。
銃身は冷たく光り、プラスチックのおもちゃのような軽さではなく、ずっしりと重かった。
……たぶん、本物。
わざわざこんなものを送りつけたということは、コンドルの言うことはウソじゃない。逆らえば本当に高俊を殺すつもりだ。
これを、長井……人間に向けろと言うのか?
無理だ。
人殺しなんて、あり得ない。
あってはいけない。
高俊にはこのこと絶対に言えない。
でもそれで毎日、俺はコンドルに怯えながら生活しなければいけないのか……?
「コンド、ル」
こんど……る……?
「え……っ」
俺は携帯を取り出し、電話を掛ける。
過去に何度も電話しそのまま音信不通だった彼に、今度はあっさり繋がった。
「……近藤か?」
「もしもし糸原先輩、久しぶりですねえ。何か用ですかあ?」
「……今時間、大丈夫か?」
_
最初のコメントを投稿しよう!