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「で、ベソのエサはここ。いい?」
「あぁ。」
それから私はオルフェにここでの常識や電化製品の使用法などを教えた。
覚えが良いので大変楽である。
「洗濯機…だっけ。これ便利だな。」
「でしょ?…ところでオルフェ、あなた前髪長すぎじゃない?」
「…そうか?」
切ってあげたいが、私ではぱっつんにしかねないのでやめておく。
美容室にでも行かせればいいのだが、このオルフェの風貌では目立つし、何か起きそうなので、できれば外には出したくない…。
仕方ない。
「これ着けてなさい。」
「なんだよ…この可愛いやつ…」
私が差し出したのはお花が付いたピン。100円ショップで買ったものだ。
「男子は清潔感が大事なの!ほらつけてあげるから」
「いっ、いいよ!自分でやる!」
オルフェは私の手からヘアピンをひったくり、いそいそと前髪を分け、ピンでとめた。
「そうそう。あ、爽やかになったよ!似合う似合う!」
「フン…嬉しくない」
オルフェはぷいとそっぽを向いてしまった。
「あ、そ。まぁいいけど。じゃあ私お風呂入れてくるから」
風呂場へ向かおうとした、その時
――俺たち魚人の一生は~生まれて飯食って土下座して…
「…!?」
変な歌が、どこからともなく聞こえる。
「オルフェ、何か聞こえない…?け、結構近いような…」
「本当だ、風呂…からじゃないのか?」
ズカズカとオルフェは風呂に向かって歩き出す。
私はオルフェの後ろをそろりそろりとついて歩いた。
何か…何かが確実にいる…!
(様子を見よう)
(う…うん)
風呂の中の声に集中する。
変な歌だが、なかなかお上手で澄んだ声をしている。
私は風呂の中の人物はオルフェと同じ、どこか別の世界から来た何者かだろうと予想している。もう何が起きても驚かないだろう。
――まぁ、なんで土下座するかっていうと、魚人はモテないんで人魚の方々に結婚してくださいって頼むからなんですけども…
「「…。」」
何故か急に語り出した。
――理不尽ですよねぇ、魚人にも女性がいればいいんですけど、しかも人魚の男って器量良しばっかりで……あれ?ここどこだ?…まぁいっか…。
「よくねぇよ!!」
あ、ツッコミ型なんだこの人…。
思わず扉を開けてしまったオルフェの後ろから中を覗くと…
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