夏の唄

いつかの思い出

あたしと航は、まだ付き合っていない。

正確には、一度別れた後だった。

中学３年生の頃、あたし達は付き合っていた。
一緒に帰ったり、放課後の学校を手を繋ぎながらブラブラしたり、時にはキスをしたり…。

凄く、凄く好きだったけど、あたしは自分の気持ちをあまり言葉に出来なくて。
航に誤解や嫉妬をさせた結果、自然と別れた。

その後、航には新しい彼女が出来たみたいだったけど、あたしはまだまだ好きだった。

別れてから一度も話さないまま中学を卒業して、高校に入学する頃、あたしは思い切ってメールしてみた。

『高校合格おめでとう』

たった一言のメール。

『ありがとう』

返信もたった一言だったけど、そのメールがきっかけで、あたし達はまた仲良くなった。

今こうして航がとなりにいてくれて、本当にあの時メールをして良かったと心から思った。