塔×蝶

6/7

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
  「だめだよ、そんなの困るっ! わけわかんない……食べないで」 あたしがそう言うと、バクは蝶をふっと逃がした。 だけども蝶はくるくるとバクの周りを飛んでいる。 どうして? あたしはこんなにもやめてほしいって思ってるのに。 あたしの核なら、逃げてよ。 「ひとつヒントをあげよう」 歌うように、バクが話しだす。 つかつかとあたしに歩み寄ってくるから、つい、後ずさった。 「これを食べたって君は死なないよ。俺と同じ存在として生きていける」 「どういう……意味」 ついに背中は壁につく。 バクはあたしの目の前に立って、にっこり笑う。 「そのまんま、だよ?」 そしてまたすっと手を、今度はあたしに差しだした。 そこに、虹色の蝶がぴたりととまる。 バクに食べられたくないあたしの意思に反して。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加