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バクの所まで戻ったところで、あたしは信じられないものを見た。
「……『貘』?」
「そう。夢を食べる伝説の生き物よ。私は君の夢を食べにきたの」
バクが、女性と話していた。
身長はバクより少し低いけど、大人っぽくて余裕のある声色。
栗色の髪は長くて、背中まで伸びている。
あたしからだと後ろ姿しか見えないから顔は分からない。
おかしいのが、バクが言っていたのと全く同じことを、あのお姉さんが言っていること。
しかもそれを、まるで初めて聞くことのように、バクが怪訝そうな顔をしながら聞いてるんだ。
「俺の夢なんか食べてどうするの? 俺は、そこまで行ったらいつも夢から醒めてしまう。面白くもなんともないよ」
無表情で淡々と、さもつまらないことのようにバクが言う。
それを聞いたお姉さんは、肩を震わせた。
笑ってるんだ。
「それでもいいのよ。あなたの夢は美味しそう。私にはわかるの」
それからお姉さんはバクに歩み寄り、くるりと振り返ってあたしを指さした。
「行きましょう? あの小屋へ」
正確には、あたしよりも向こう側の小屋を。
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