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「ううん、食べる意味があるのは『貘』の素質のある者の心だけ。普段食べるのは悪夢……『夢』であって『心』ではないよ」
「それじゃあ、いっぱい人を殺さないといけないってわけじゃ……ないの?」
「うん。まぁ、死にたくなるほど嫌な夢をいっぱい一緒に見なきゃいけないんだけどね」
それはそれで嫌だけど……殺さなくても済むんだったらそれでいい。
一人でずっと悪夢を見てそれを食べ続けるなんて、気が狂いそうだ。
だけど、一人じゃない。
「……俺と君と、コンビの『貘』なんてきっと初めてだよ」
一人ぼっちの『貘』は、今日から二人になった。
だけども、夢の世界は一人で一つ。
たとえ『貘』の素質を持つ人の夢に入れても――『貘』から解放されるのは一人だけ。
それだったら食べなくてもいい。
寂しい一人旅は終わりを告げた。
一人ぼっちに戻るくらいなら、永遠に『貘』として悪夢を食べながら二人で生きていこう――だなんて。
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