11人が本棚に入れています
本棚に追加
カウンターで手続きを取る。
「すみません、これ」と渡した相手が彼女だった。
まだ図書館の仕事に慣れていなかったらしく、あたふたとしながら手続きをしてくれた。
「た、大変遅くなりまして、も、申し訳ありません。」
頭を深く下げて俺に本を差し出した。
その姿がなんだか弥生と被り思わず笑ってしまう。
彼女は顔をあげて、真っ赤になった。
そして俺が借りた【月夜の森】の話をしはじめた。
この本が大好きだと何度も俺に言い、絶版になっていて手に入らないことも教えてくれた。
その本がこの図書館にあるからここに就職したとも。
俺と息吹以外にこの【月夜の森】の話を知っている人がいて驚いた。
実際この本が俺たちが聞かされていた【月夜の森】とは限らないけど…。
だけど母さんが俺たちに聞かせてくれた【月夜の森】と俺が図書館で見つけた【月夜の森】の話は一致していた。
そもそも【月夜の森】はうちに2冊あり、俺が借りてきたその日に親父が俺たちにくれた。
最初のコメントを投稿しよう!