25人が本棚に入れています
本棚に追加
その日からの修行は厳しいものだった。幾日も幾日も続く修行の日々が楽しいとさえ思えたのは、それだけトニーの憧れが強かったからかも知れない。
派手な暮らしではないが、それでも衣食住に事欠く事はない。毎日疲れた身体を癒す、ベッドもある。近所の住人とも気軽に会話出来る。自分が怪盗である事を除けば、それはトニーが今まで望んでも叶えられなかった生活だった。
スカルと自分だけが、この暗雲立ち込めるこの国を救える唯一の存在なのだ。
まるで正義の味方にでもなったような気持ちで、日々を過ごしていたある日、事件は起きた。それまでに死体など腐るほど見てきたトニーだったが、それはあまりにも衝撃過ぎた。
十七歳の春。己の失敗が招いた死体の山に、その恐怖心が隠せない。自分がまだ半人前だったばかりに……
その日以来、あれだけ憧れていたスカルと、少し距離を置くようになって行った。
最初のコメントを投稿しよう!