2つの影が重なる時代

7/10
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「お前があの怪盗スカルか。思っていたよりガキだな」  その男につられて他の男達も笑う。どうやらトニーを勝手にスカルと勘違いし、それを捕まえた功績に酔いしれている……ちょっと考えれば分かりそうなものだが、正常な判断が出来なくなるほど、追い詰められていたと言う事だろう。怪盗スカルはそれほどまでに、ギャング達には恐怖の的だったと言う事だ。  それにもし、捕まえたともなると、その地域で縄張りを張る組織にとって、優位になる。他を出し抜ける。それも功を急いだ要因のひとつだったのだろう。  悲劇なのはそれに巻き込まれたトニーの方だ。  これだけの数の足場もないほどの男達で埋め尽くされた部屋内でマシンガンをぶっ放す事もないだろうが、どちらにしろ、その生命が風前の灯である事に違いはない。それでも網から必死に逃げ出そうともがくトニーの動きが、余計に連中の嘲笑を誘う。  その時、窓ガラスが激しい轟音とともに、粉々に砕け散った。  男達の注目が、一斉にそちらに向く。必要以上に、狭い一室に入り込み過ぎたせいで、連中は身動きが取れない。 「やはり罠を仕掛けていたか。小汚いお前らの考えそうな事だ」  声が室内に響く。反響したその声の主がどこにいるのかが分からず、それぞれの向いている方向がバラバラだ。中にはお互い、顔を見合わせている者までいる。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!