亀裂

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 それから約2ヵ月、織人の不安と陽登の情緒不安定を他所に、スノードームはいつも通りに何事も無く時は過ぎて行った。  がしかし、水面下では泰志朗の組が仲間に入った事で、今までよりも組同士の仲がより険悪となっていた。  泰志朗の組の連中の態度があからさまに悪いせいである。今まで、離れ離れであった組が1つになるのだから、そんないざこざがあっても当然の事で、ブリザードの面々は任務とは別にそれらを鎮める為、自分の時間を割いて忙しく走り回っていたのだった。  任務と通常の仕事だけでも忙しいのに、追い打ちを掛けるかの如く、組同士のいざこざやトラブルが増加する。隊員達の溜め息も増えるばかりだった。  それなのに、頭である泰志朗は何の対処もせず、毎日飽く事なくここぞとばかり、陽登に付き纏っている。  相手にする事は殆ど無かったが、陽登は苦虫を噛み潰したかのような顔をし、イライラも疲労もピークへと達していた。当然、いつも傍に侍る織人への風当たりも相当なものである。  周囲から見れば、陽登のそれはただの八当たりとしか思えず、その対象となっている織人がなぜ言い返さないのかと頭を捻るのだった。  織人は織人で、付き纏って来る泰志朗へは敵意を抱いていたが、それよりもまず自分に課せられた疑惑を解消したいと必死だったのだ。  陽登は気にしていないと言っていたが、その割に機嫌も態度も全く変わらないので、次第に腹立たしくなって来る。けれども、そこで逆切れしたって何の解決にもならないし、間違いなく自分が悪いと思っている為、沸々と沸き上がって来る怒りを誰に向けていいのやら分からないまま、それを抑えるので精一杯だった。  そして更に、あの時偶然出会ったミサキからは連日連夜、絶えず電話の嵐が鳴り止まず、相手にしてはいないものの、まるでコアなファンのように待ち伏せまでされる始末。しかもその瞬間を狙ったかのように、毎度陽登の目の前でするものだから、陽登の機嫌は益々酷くなるばかりだった。  それは、時期的に桜の開花がもうじきという4月の末頃だった。 「お前何なんだよっ!!!」 相手の襟元へと乱暴に掴みかかり、ガンを垂れる。  身長もやや低めの相手は「フンッ」とやけに余裕ぶった態度で、掴みかかって来た男を嘲笑した。
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