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「いいか?あたしらキャリアが、今までにどれだけの扱いをされて来たと思ってんだよ。それが分からねぇお前らじゃねぇだろう?他の地下都市が独立するかもしれねぇって時に、同胞たるあたし達はそれを笑って見てんのかよ。政府にずっと飼われたままで居ろって事か?そんなの有り得ねぇだろ。そこんとこ、お前らどう思ってんだ?あたしは絶対に嫌だ。あたしらだってれっきとした人間なんだ。なんでキャリアになったってだけで人間以下の扱いをされなきゃなんねぇんだよ。完全におかしいだろ?」
「……陽登…」
「他人事じゃねぇんだ。お前らも良く考えろ」
陽登はテーブル席できょとんとする仲間達にも目を向けた。
彼女の口調と声量は、決して大きなものでは無かった。ただ淡々と、切々と陽登はキャリアが突き付けられている現実を言葉にして聞かせただけだ。
それなのに、彼女の言葉はずしりと重く、彼らの胸に大きく響いた。
「……だな」
唇を噛み締め、小さく頷きながら蓮士が呟く。
「…笑ってる場合じゃ…ないよな」
氷刹も呟く。
織人は口を閉ざし、陽登をジッと見つめていた。
他の仲間達は悪さをして怒られた時のように項垂れている。
「中部が独立するなら、あたしらも後を追うなりして独立するべきだ」
シンとしてしまった店内を、陽登の言葉が静かに静かに流れて行った。
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