捜索

2/13
273人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
赤毛の大柄な男は、足音を忍ばせながらせわしなく周りを確認していた。 そしてある一角で足をとめた。 コンコン、とレンガ造りの壁を叩く。 「俺だ、じい」 するとなんと壁がすっと上に動き、壁の中に空洞が現れた。 彼らがここに隠れ家を構えたのは1ヶ月前。それまでは、色々な国の町やスラム街を転々としていた。 男がその中に潜り込むと壁は再び閉ざされた。 中は意外と広く、小さな老人がちょこんと座って茶をすすっていた。 老人が男の方を見る。 「早かったのう……アレックス」 「ああ、凄いニュースがあったんだ」 「良いニュースかの?」 「ああ」 アレックス、と呼ばれた男はニッと笑った。 「姫さん…ローザが、この町に居た」 ガチャン! じいやが湯飲みを落とす。 「それは……本当なんじゃな、アレックス」 「ああ、大きくなってたから初めは気がつかなかったが……あの声と、気の強さは間違いなく姫さんだ」 老人の手がぶるぶると震える。 「そうか……そうか……しかし何故この国に……いや、そんなことはどうでも良い……生きててくれただけで」 じいやは涙を流した。 「ローザ、生きておったか…良かった、本当に良かった。アレックス、どこで見たんじゃ。じいやにも会わせておくれ」 「……駄目だ」 アレックスは申し訳なさそうな顔で言った。 「姫さんを怪盗にしたくないだろ?」 「どういう意味じゃ……」 「じぃ、あんたは昔とほとんど変わらねぇ……姫さんはあんたはが誰だかすぐわかるだろう。そしたら俺達についてきたがるさ……俺達の今の職業が怪盗だとしてもな」 「……」 じいやは寂しそうに言った。 「なるほどな。ローザを怪盗にはしたくない……それはワシもそう思う」 怪盗は、あくまでも悪業なのだ。 アレックスは言った。 「まぁ俺も姫さんのことは気になるさ……だから、ライルという偽名を言っておいた。時々ライルとして姫さんに会って、じいにも姫さんがどうしてたのか伝える」 「……そうじゃな。頼むぞアレックス」 アレックスはうなずいた。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!