記憶

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「……」 目を覚ましても、しばらくベッドの中で丸くなっていた。 またあの夢を見た……。 しかし、いつもとは少し違った。 『兄さん……迎えに行くわ』 こんな言葉を聞いたのは初めてだ。 「ジッリョ、起きろ!」 「……朝から大声を出すのは感心しませんよ、アルゼンテ」 「ああん?何しけたこと言ってんだ紳士野郎。これだからイギリス人は」 ここはイギリスのある町。そこの小さな町にイギリス支部として邸を構え、アイリスファミリーの一部が住みこんでいた。 アイリスファミリーはイタリアンマフィアなので当然ファミリーのほとんどがイタリア人だ。 その中にイタリア人でないジッリョが何故居るのかはわからない。 自分でも記憶が無いのだ。 因みにイギリス人というのはアルゼンテの勝手な憶測だが、イタリア語の他に英語を話せること、元々この国に住んでいたらしいこと、自分の性格からして本当なのだろう。 勿論ジッリョというのは本名ではなく、ボスが勝手に命名した。 イタリア語で、百合という意味。 その整った容姿から名付けられた。
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