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「おーいジッリョ!早く乗れよ!」
「……アルゼンテ。貴方は少し落ち着きというものを」
「何だよ紳士野郎。国を離れるのが嫌か?まぁ俺にとっちゃ里帰りでも、お前にとっては知らない土地だもんなぁ」
ゲラゲラと品の無い笑い方をするアルゼンテ。
「……」
ジッリョはため息をついた。
アルゼンテは、長い間一緒に過ごしているためほとんど唯一と言える友人だ。
しかし品の無さにはほとほと閉口する。
「ほら、こいよ」
ジッリョは、船の上からアルゼンテがさしだした手を掴んだ。
アルゼンテはそのままジッリョの手を掴んで船内まで連れていった。
「ほら見ろよジッリョ、なかなかイカすだろう」
終始笑顔のアルゼンテ。
「……イタリア行きが楽しみですか、貴方は」
「勿論!」
アルゼンテは即答した。
「イギリス支部に配置されてから随分たつしさ……それにイタリアには、家族との思い出が沢山あるんだ」
「家族、ですか」
「もう死んだけどな」
「……」
記憶喪失のジッリョには家族との思い出など勿論ない。
家族とは、どんなものなのだろう。
マフィアは仲間をファミリー、家族と呼ぶが。少なくともうちのファミリーは本当の家族では無い。家族だと思うなんて吐き気がする。
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