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「……あれは、アイリスファミリーの増援か」
アレックスは船から出て警官を皆殺しにした人影を睨んだ。
「なんて酷いことを……」
隣のローザが、肩を震わせて怒りをあらわにする。
「警官だって怪盗だって悪者だって、みんな生きてるのよ。等しく同じ命よ」
ローザは悪党を懲らしめることはしても殺したことは無い。
きっとアイツらは、今簡単に警官を殺したように孤児院の兄弟達を殺したに違いない。
「絶対許さない……」
ローザは歯をくいしばった。
アレックスがなだめるようにローザの頭を撫でた。
「姫さんの気持ちはわかるさ。でもな、姫さんだけでかなう敵じゃねぇ。さぁ、早く帰れ」
「帰れって……あなたは?」
「俺か?」
アレックスはニッと笑った。
「俺はアイリスファミリーをぶっつぶす。あんな悪党共放っておけねぇ」
はじめはアイリスファミリーと接触する気はなく、ローザを助けにくるだけのはずだった。
しかし彼らの非道な行いを目の前にして、真っ直ぐな心根のアレックスはこのまま帰ることなどできなくなった。
懲らしめてやらないと気がすまない。
「だが姫さんを巻き込みたくはない……お願いだ、帰ってくれ」
「嫌よ!」
「姫さ……」
「嫌!」
ローザはアレックスの厚い胸板をドンッと叩いた。
「私はもう子供じゃないわ。銃も扱えるし、身を守る術もある。一人前の大人よ!」
「わかってる。わかってるから頼む……」
「いいえ、わかってないわ。アレックス兄さんはまだ私を子供だと思ってる!」
アレックス兄さん。
その言葉を聞いて、アレックスは目をそらした。
「俺はお前の兄さんじゃ……」
「いいえ、あなたはアレックス兄さんよ。さっき頭を撫でてくれた時にはっきりわかった」
あの感覚。ずっと求めていたあの感覚を、間違える筈がない。
「……」
ローザは、目をそらすアレックスの視界に入り込んだ。
「ねぇ兄さん、こっちを見て?」
「……ローザ」
二人の視線が合った。
アレックスの紅い瞳が、昔のあの兄の瞳と重なる。
やはり、あなたは。
気のせいなんかじゃなく。
「……ああ、やっぱり兄さんよ」
ローザはアレックスに飛びつくように抱きついた。
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