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「何で初めて会った時に正体を教えてくれなかったの。まさか私だとわからなかったの?」
責めるローザにアレックスは苦笑した。
「いや、すぐにわかったさ。ただ姫さんを俺達の世界に引きずりこみたくなかった」
「俺達の世界?どんな世界なの?もう秘密は無しよ」
アレックスは少し迷ってから言った。
「俺は今、じいやと暮らしている。孤児院が襲われたあの日、俺はじいやを連れて逃げたんだ。どうやらアイリスファミリーの連中はじいやを狙ってたらしい」
「じいやを…?」
アレックスが今じいやと暮らしているというのは驚きだったが、それ以上に何故じいやがマフィアなんかに狙われたのかが理解できなかった。
「理由はわからねぇ…じいやは自分のせいで多くの子供を失ったって自分を責め続けてる。だから俺から孤児院襲撃の真相を尋ねるのは避けてたんだ」
じいやに悲しい思いをさせたくなかった。
たとえじいやが何者であっても、アレックス達を育て慈しんでくれた大事な人なのだ。
「……で、今俺達は裏社会で生きてる」
「裏社会…まさかマフィア?」
「まさか」
とんでもない、とアレックスは言った。
「マフィアなんかよりよっぽど粋さ……怪盗だよ」
「……怪盗?」
ローザの目が丸くなった。
やっぱり、嫌がられるだろうか。
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