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「…じゃあ俺は用が済んだしもう行く」
「珍しいの、報酬をねだらないのか」
情報屋は笑った。
「小遣いねだるガキ扱いしないでくれよ。今回はサービスだ。アンタに子供達のことを知らせてやりたいと思ってな」
「…そうか。珍しいこともあるもんじゃな」
「まぁな…あと、サービスついでにこの薔薇置いとくぜ」
「…赤い薔薇?」
「娘さんが無事に帰ってこれたら、渡してあげてくれ。どうも俺には似合わない花でね」
「…どこか出かけるのか?」
じいやの目つきが鋭くなる。
「…まぁ、ちょっとな」
情報屋はそれ以上は何も言わず、帽子を手に優雅に一礼すると隠れ家を出て行った。
「………」
本当に、珍しいこともあるものだ。
彼は常に自分の利益を優先させ動いている。
昨日情報を売った相手の情報を、明日他の相手に売るなど日常茶飯事に行う男である。
…その男が、利益を求めず情報を提供してきた。
一体なにがあったのだろう。きっと裏があるはずだ。
「しかし今考えるべきことは…」
情報屋のことより、心配しなくてはいけないことが目の前にある。
「アレックス…ローザ…お前達、まさかアイリスファミリーと戦う気ではあるまいな…」
それは即ち死を意味する。
そしてジャック。
どんな理由なのかは知らないが、アイリスファミリーとしてあの町に居る。
「………」
3人は再び出会うのだろうか。
その再開は、どんな形になるのだろう。
嫌な予感がしてならない…。
「神よ…ワシの愛する子供達をお守り下され…」
じいやは深くうなだれ、神に祈った。
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