離別

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「さあアルゼンテ、早く紅の雫石の奪取に向かいましょう。僕達の出現に警察が混乱している今がチャンスです」 「……ああ、そうだな」 ジッリョの背後のアルゼンテはぶっきらぼうに答えた。 ジッリョは振り返らずにため息をついた。 「まったく…何があったか知りませんが貴方らしくな…!?」 その瞬間、背中に鋭い痛みを感じた。 「………アル…ゼンテ」 ジッリョの背中から鮮血が噴き出す。 いつの間にかすぐ後ろに立っていたアルゼンテの手に、血に濡れたナイフが握られていた。 「アルゼンテ…何故…」 アルゼンテの瞳には、いつもの明るさが無い。 アルゼンテは呟くように言った。 「何でお前なんだよ…」 「………?」 アルゼンテの言葉の意味がわからない。 背中にかなりの痛みを感じ、意識を手放しそうになるのを必死で堪えた。 「今まで俺はお前と同じ仕事をして…同じ時間を過ごして…幹部入りを目指して必死でやってきた…」 アルゼンテの両親は、アイリスファミリーのマフィアの幹部だった。 …そして、ファミリーのために死んだ。 だからアルゼンテは両親の意志を継ぎ、幹部…ボスの側近になりファミリーを守ろうと誓っていた。 「約束されてたはずだったのに…あの時、ボスは俺を幹部にするって言った…」 両親が死んだ時、ボスはその息子のアルゼンテを労って将来を約束した。二十歳になったら、幹部の椅子を用意すると約束した。 たがらそれまではイギリスで経験を積めと言われ、それに従った。 そして今年、アルゼンテは二十歳になる。 「てっきり今回のイタリア行きで俺は正式に幹部として迎えられると思ってた……でも、俺じゃなかった!何でお前なんだよ!!」 わかってる。 あの時のボスの約束は、きっとボスの気まぐれで。 ボスが大勢のファミリーの内の1人である俺との約束を覚えてるはずないことなんて、わかってる。 それでも。 「何でよりによってお前が…」 親しい友人だからこそ憎悪…いや、ひがみの念が大きい。
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