離別

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状況を飲みこめないジッリョは、ただひたすらアルゼンテの話しを聞き背中の痛みと戦った。 「アルゼンテ……僕らは友人だと思ってました」 一緒に過ごす時は優しく、温かかったから。 「やめろ!何も言うな…」 アルゼンテはジッリョに銃を向ける。 「お前が死ねば、きっと幹部の椅子は俺に回ってくる…」 本心ではそんな確証は無いとわかっているけれど。 …そう、信じたいのだ。 ジッリョは静かに言った。 「アルゼンテ……貴方も、所詮マフィアでしたか」 血を好み、己の欲に従う。 彼だけは違うと思っていたのに。 アルゼンテがチャキッと銃を構える音が聞こえた。 ジッリョは目を瞑る。 考えようによっては、ここで死ぬのはラッキーと言える。 何処の誰かもわからない奴に撃たれて死ぬより、アルゼンテに殺されたほうがいくらかマシだ。 しかしその時だった。 「おい、お前ら何やってる!」 …先輩の声だ。 先輩は、傷ついたジッリョと銃を構えるアルゼンテを交互に見比べた。 「何てことだ…ファミリーを裏切るのは重罪だぞアルゼンテ!」 「違う!裏切ったんじゃない!」 叫ぶアルゼンテ。 「じゃあお前の服についた血は何だ!ジッリョの血じゃないのか!」 「…………っ」 アルゼンテは駆け出した。 「待て!アルゼンテ!!」 ジッリョが叫んでも、アルゼンテは裏道に消えて行った。 「こりゃ酷い傷だ…にしてもお前、アイツの友人じゃなかったのか?どうしてこんなことに…」 先輩はアルゼンテを追うよりジッリョを介護するのを選んだようだった。 「さあ…僕には何も…っ」 あまりの痛さに口を閉じる。 「こりゃ深い傷だな…すぐに救護班を…」 先輩は携帯を取り出し、連絡をとろうとした。
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