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「………」
倒れている先輩の上着から、紙切れが覗いていた。
「……」
痛む体でそれをとりだす。
それは写真つきの手紙だった。
写真には、先輩と美しい若い娘が笑顔で写っている。
“愛しのベアトリーチェへ”
『誕生日おめでとう!今忙しくて、手紙が間に合うように出せるか心配だよ。こんな職業だからなかなか会えなくて申し訳ない。この仕事が終わったらしばらく二人きりですごそう、約束する』
手紙は数行にわたった。
『愛してるよ』
手紙はそう締め括られ、下の方に住所が書いてあった。
「……………」
警官が、ジッリョの手を手錠で繋ごうと近寄ってきた。
ジッリョは手紙を素早くポケットにしまった。
「ケガをしてるな…歩けるか」
抵抗せず、ジッリョは警官に従う。
しかしふと体の力が抜けた。
「お、おいどうした!」
ジッリョを誘導していた警官が驚く。
ジッリョは地に倒れていた。
「貧血だな…大丈夫、息はある」
他の警官が言った。
「コイツを犠牲にしてせっかく捕まえた捕虜なんだ…死んでもらっちゃ困るぜ」
もう1人の警官が、仲間の遺体を担ぎながら言った。
「まったく…どんな貴重なお宝だか知らないが、こんなこといつまで続のかね」
「まったくだ。早く帰って妻の手料理が食べたいよ…」
三人は口々に言いながらその場を後にした。
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