202人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「なんで……
「とりあえずさ、中入れてよ」
俺の言葉を遮り
上田はにっこりと微笑む。
その笑顔は何も言わせないと
思わせるような笑顔だった。
ここで入れないわけにはいかない。
俺は急いで鍵を開け、
上田を中に招き入れた。
「……コーヒーでいい?」
「え~。俺紅茶派」
「……わかった」
上田がどうして
突然訪ねてきたのかはわからない。
でも、
わざわざ訪ねてくるのだから
重要な事なんだろう。
そう思って上田の様子を伺ってみたが
変わった様子はない。
今だって遠慮を知らずに
我を通している。
いつも通りの上田だ。
「はい、」
2人分のマグカップを持ってリビングに入ると
上田はソファでまるで自分の家のような
態度で寛いでいた。
そこにはやはり変わった様子はない。
マグカップをひとつ上田の前に差し出すと
上田はにっこり微笑み、
ありがとうとお礼を言った。
その笑顔に俺の鼓動は速くなる。
ドクン ドクン と脈打つ心臓。
それでも平静を装って俺は
軽く返事を返した。
.
最初のコメントを投稿しよう!