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その後は、
何でもない話で盛り上がった。
今日の撮影のこと
中丸と飲んだときの笑い話……
どうして訪ねて来たのか
気になったけれど、
それを口にすることは出来なかった。
一通り話して少し落ち着いた頃、
紅茶のおかわりでも注ごうと
立ち上がった瞬間。
不意に目眩が襲ってきて、
俺はバランスを崩してしまった。
そのせいで手に持っていた
マグカップが滑り、床へと落ちてゆく。
俺の身体は上田に咄嗟に
支えられたけれど、
マグカップはそのまま。
堅いフローリングに落ちて粉々に割れた。
「っ、ごめん」
その光景をぼーっと見つめていた俺は
はっとして上田から離れようとする。
「赤西、」
しかし、
上田は俺を解放してくれなかった。
腕を痛いくらいに掴み、
その腕を振りほどこうとしても
ボクシングで鍛えているだけあって
振りほどくことが出来ない。
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