~3rd story~

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「最初聞いたとき、ほんと驚いた。  確かに赤西の体調がよくないことは  気づいてたけど、まさか……」 そこで上田は押し黙り、 拳をぎゅっと握りしめる。 それはまるで、 自分を責めているみたいに。 上田が自分を責めることなんて 何一つとしてないのに。 俺はそっとその拳に触れた。 ビクッと上田の肩が跳ねる。 そしてゆっくりと俺に視線を向けた。 俺を見た上田の顔は 驚きの色に染まっていて、 大きな瞳が見開かれている。 そんな上田に対し、俺は微笑みかける。 「ありがとう」 それは、 自然と溢れた言葉だった。 知られたくないと思っていたけど、 本当は、 誰かに知られたかったのかもしれない。 誰かに気づいて ほしかったのかもしれない。 ずっとずっと、恐かったから。 いつも苦しくて、 いつ闇に囚われてしまうかと怯えてた。 本当は、 助けてほしかったんだ。 「ありがと、うえだ……」 もう一度呟いたら、涙が溢れた。 涙を止めたくても 次から次へと溢れてきて。 まるで涙腺が壊れてしまったみたいに。 子供みたいに泣きじゃくる俺を、 上田はただ、抱き締めてくれた。 優しく 優しく 抱き締めてくれた。 .
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