~4th story~

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山下から話を聞いた俺は、 店を飛び出すと車に乗り込み、 制限速度ギリギリで車を走らせていた。 いま思うと あんな手荒な運転をしたのは 生まれて初めてだったかもしれない。 でも、 それだけ赤西を心配していたのだ。 赤西の住むマンションに着いて 赤西の部屋を見上げて見るが 明かりはついていない。 俺より早く帰ったはずなのに……。 急に不安になった。 でもとりあえず 赤西の部屋まで行ってみる。 しかしやはりインターホンを鳴らしても 応答はなかった。 ドクドクと脈打つ心臓。 俺はドアに背中を預け、 そのままズルズルと座り込んでしまった。 体力には自信がある。 でも今はみっともないほど息が切れる。 きっとそれは体よりも 心が疲れたからだ。 空を見上げると 満天の星空が広がっていた。 彼も……見ているのだろうか。 不意にそんなことを思って、 頬が緩んだ。 コツコツと静かな廊下に足音が響く。 少し気だるそうに 足を引きずってるような足音。 すぐにアイツだとわかった。 俺はゆっくりと立ち上がり、 アイツの姿が見えるのを待つ。 「おかえり、赤西」 アイツの姿が見えた瞬間、 自分の今できる精一杯の笑顔で言えば 赤西はもともと大きな目を 一層大きくして呟いた。 「うえだ……」 .
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