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…自然界において、雄より雌の方が優位性が高いのはご存知ですよね?
こんなひ弱な身体ですから、故にクイーンから…母親からも『役立たず』と判断された僕は群れの維持の為にある日巣から追い出され、野をさ迷っては適当な獲物を捕ってのその日暮らし。
住家の近くに飛竜の様な怖いモンスターが住み着けば、そのつど場所を転々と変えて流れ着いたのが…お嬢様と会ったあの樹海でした。
…その頃はもう心身共に疲れ果てて、寒冷期が来て凍える前に死のうって考えてフラフラと樹海をうろついてる内に…あの場面に出くわして。
巻き添えを食う良いチャンスだと思って飛び込んだら、後はお嬢様の存じ上げる通りです。
「…」
「…すみません、こんな重たい話をしてしまって」
そう言い苦笑いするランクに、アルピナは首を振って答える。
「…初めは、またこれ以上生き恥を晒さなきゃならないのかな…そう思っていました」
「…」
「けれど…お嬢様は違いました、僕がモンスターだったにも関わらず対等に扱って…信じて貰えた」
「……」
「だから僕も…お嬢様を守ろうといつの間にか前を向いていました、虫だった頃はそれすらさせて貰えなかった…だから今度こそ、その信頼に答えて守ろうと…」
「…もう、良いですわ…ランク…」
「…?」
話を遮り、アルピナは握る彼の手を持ち上げる。
そしてその手の甲に、口付けをした。
「おっ、おぉお嬢様!?」
忽ち彼の頬が朱に染まる。
そんな狼狽する彼に向けて、アルピナは口を放すとにこりと微笑み掛けた。
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