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「最初はこのまま悟られる事無く静かに暮らそうかと思った、じゃが何処までも広がる海を見てふと思ったのじゃよ」
「…?」
「…旅を、してみたいとな、幸い大半を失ったとは言え野を生きるには十分な力は残っておったからの、しかし…」
「しかし?」
「やっぱりこの格好で雪山登山は無謀だったのぅ!、イケると思ったが結局駄目じゃったわ!、ははは!」
「…はぁ」
「いや…流石に当たり前だと思うよ…?」
開き直るミラルーツに呆れて頭を抑えるガルムと、同じく呆れながらもツッコミを入れるナヴィ。
屈強さは常人の比では無いハンターですら何かしらの防寒対策無しには危険過ぎる土地な上、生き抜くモンスターらは皆そんな環境で鍛え上げられた強者揃いなのが雪山の恐ろしさ。
伊達に何年もそんな場所のお膝元で暮らしていない。
「…それにのぅ」
すると急にミラルーツの表情に影が出来る。
その、理由は。
「…ミラボレアスも、ロッソ…ミラバルカンももうおらぬ、妾の一族はもう妾だけになってしもうた」
『…!』
「お主らにとっては憎むべき敵じゃった、じゃが妾にとっては数少ない同胞であった…あ、別に恨んでおる訳では無いから安心せい」
『…』
少し無理した作り笑いと共に、ミラルーツは話を続ける。
「…寂しかったのかも知れぬな、旅をしたくなった理由も…こうして人と触れ合いたかったからやも知れん」
『…』
「じゃが妾は『龍』、人より…竜や獣より遥か悠久の時を生きねばならぬと定められた存在…裏を返せば常に置き去りにされて行く運命、例え触れ合いの時を得た所でいずれは…じゃ」
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