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今までに付き合ってきた男子の数は優に二十を超えている。けれども、そのどれもが一ヶ月を超えた事はない。今も。
「ごめんなさい、別れましょう」
愛花が一人の男子を振った所だった。突然の申し出に彼氏は酷く驚いた顔をして、「どうして? 何がいけなかったのか?」と、何度も彼女に聞き返している。が、彼女の返答が変わる事は無かった。
だからと言って彼氏が不甲斐無かったかと問われると、そんな事は無く、かと言って束縛を強制する男かと言うと、そんな事も無く、ならば顔が酷いのでは? と疑えどもそんな事も無い。
むしろ彼は少女に尽くし、話し、盛り上げ、彼女を喜ばせる為に一生懸命、尽くしていた筈だった。
顔もそれなりに美形で、普通の女性ならば自慢して横に並んで歩けるような、言わば“理想の彼”に属するタイプの人間だった。
子犬のようにしゅん、とうなだれ落ち込む彼を冷血に一瞥すると、もう用は無いと言わんばかりにきびすを返し歩きを進める愛花。その物言わせぬ後ろ姿に彼はついに声を掛ける事が出来ず、ただ去っていく彼女を見送るだけだった。
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