23人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほうら。着いたぞ」
道中。ヒトが物珍しいのか樹上を枝から枝へと飛び移りながら後をついて来る二匹の青猫を横目で見つつ癒されながら進むと、川と呼ぶには余りに頼りない細いせせらぎのもとに着いた。
さらさらと流れる水は透き通っていて、底で泳ぐ鮎のような魚が見える。
白身魚かな。
美味そう。
「うむ。奴らは美味じゃぞ」
食べたいな。
あっ。はねた。
食べたい。
「……腹が空いておるのじゃろうが、ぬしはまだ器が出来ておらぬ故……。食を楽しむのはまた後で、じゃ」
閻魔は言いながらどこかからか出してきた黒い布を川縁の近くの少し大きな石の上に敷いた。
閻魔はその上に座るよう眞耶を促し、眞耶は素直にそれに従う。
おお……。
この布なかなかに……ふわふわ……。
ふ。と、頭にあたたかいものが当てられる。閻魔の手だ。
閻魔が子どもを寝かしつけるかのようにゆっくりと眞耶の頭を撫で始めた。
う―……だめ……眠ってしまいそう……。
慣れない身体で移動して疲れたのも手伝って、段々と意識が奥に沈み始める。
「眠れば良い。そろそろ約束の者たちも来よう。ぬしはこれよりこの黒布に包まれ、再度新たな器を得る。お別れじゃ」
……閻魔、行っちゃうの?
「……うむ。心して生きろよ神乙女眞耶。……それがぬしの仕事じゃ。この世界がぬしを認めたとき、わしはまたぬしに会いに来よう」
閻魔は撫でる手を止めると、眞耶を見つめ微笑んだ。
「ぬしにはわしから生きる為の贈り物をやる。望め、それがぬしの力となる。
……そして覚えておくのじゃ。わしの名は――」
最初のコメントを投稿しよう!