先祖はヤキチ

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 まるでバケツをひっくり返したかのようなどしゃぶりの雨。  それまでにもちらほらと小雨は降っていたようだが、徹夜用に近くのコンビニまで夜食を買いに行こうとした矢先に突然雨が酷くなった。  空気の全く読めていないこの雨に、頭を悩ませている人もさぞかし多いことだろう。  多――いや、うん。たぶん、何人かはいる筈。  ……とまあ、ここにも、そんな人たちの中の1人がいたりして。 「やめーやめー……てい!」  雲よ……跡形もなく消えろーっ  眞耶(マヤ)は、手に持っている即席の五秒てるてるぼうずを届くはずもない窓の向こうの空に向けて投げつけた。  ティッシュで作られた安っぽいそれは、窓ガラスに力無い音を立てて当たると、ぽさりと軽い音とともに床に落ちる。 「……はああ」  私に、なんか超能力的な凄い力があったら……雨なんて、今すぐ止ませてやるのに。 いや……寧ろ瞬間移動する能力が欲しい。 それなら、コンビニだけじゃなく学校までも歩かず一発で行ける。うん、それだ。それがいい。  彼女は、神乙女 眞耶(カミトメ マヤ)。 基本姿勢は他力本願な体たらく。 どうすれば楽に生きられるか。 それが彼女の人生最大のテーマである。 「……考えるの、面倒くさい。寝よ」  眞耶は、今日徹夜するのはもう止めよう。と、手に持っていた財布を適当にリビングのテーブルの上に放り投げて放置し、愛しの枕がある自室へと向かった。
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