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「……お?」
「くるしゅうない。まあ、座れ」
眞耶愛用の低反発枕を抱きかかえ、めんどくさがり屋な眞耶によって万年床となっている布団の上に胡座をかいて座る少女――。
いや、誰ですか貴女。
そして貴女は何故他人様の部屋ん中で和傘なんぞ差しているのですか。
あれですか?
心の雨が降っているとか言っちゃう系ですか?
「どうした? 何故座らぬ」
私が目の前の不法侵入者をどう追い出そうかと頭の中で考えていると、その相手に「遠慮するな」と座布団を勧められた。
「……えっいや……はい」
何だろう。
何だろうこの子の久しぶりに会った友人に語りかけるかのようなフレンドリーさ。
えっ……どうしよう…………もしかしてこの子は私の知り合い? ……えっいやでもこの子が誰か本気でわからないんですけど私。
え? え? ……でもさぁでもさぁ……この子絶対私のこと知ってる口振りだよね。
……あっほら、「久し振りじゃのう」とか言って笑ってるし……。
一応「ほんとですねー」とは返してみたけど……。
……え? 誰?
……ほんとわかんないんですけど……これヒントとかないの? ヒント。
あっ……ノーヒント? ……ああ……絶望。
……私、ダメなんだよねー。苦手なの。人の顔と名前覚えるの。
小学校でずっと同じグループ的なものにいたのに最後まで名前出てこなかった人いるもん。てへ。
……もうやだ死にたい。
「その願い。叶えてやろう」
……え?
少女は鎌を振り上げた。
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