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今、私の足の下には私がいる。
いや、正確には私の上に私がいる。
……何が言いたいかって?
つまり私は今、死んで宙に浮いております。
床にいる私はまるで糸が切れた操り人形かのようで、下半身は正座の姿勢のまま上半身だけを前のめりに床に預けている状態だ。勿論顔面床キッス。しかも腰までのばしていた黒髪が身体や周りの床に広がって軽くホラー……。
……わー。
舞空術一回使ってみたかったんだー。あはは。
「夢が叶ったようで何よりじゃ」
私が足元の自分から視線を外し現実逃避に取り掛かろうとしていると、言葉を聞いた少女が頷く。
いやいや、これも貴女様のおかげです。
「死因は魂損失による身体のショック死。器と魂の繋がりごと切ったからの。中途半端に残しとらんから仮死など経由せず、さっくり逝けたはずじゃ」
ほんとさっくり。
痛みもなかった。
「そこはわし、プロじゃからな」
流石っす。
「しかし、新米などは器と魂を上手く切り離すことが出来ないからして、魂に痛みを与えてしまうのじゃ。あれは駄目じゃ」
そうなんっすかぁ。
何かもうわけわからなさすぎて、もはやどうでもよくなりかけていると私の視界の端を一瞬黒い物体が通過する。
……あ。ハエ。
「ま、誰しも最初は下手なのはしょうがないことじゃがの」
あっちょい!
ダメダメ! こっち来んなハエ!
「わしもあの頃は失敗してばかりじゃった……」
……っ! この体スピード出ねえぇ!!
「そんな時あやつが……」
てめっ!
こっち来っ――!
ア゛――――ッ!゛
「……何を泣いておる……」
……ハエ……ハエに…………ハエに体を……もうお嫁に行けないぃぃ……
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