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うっうっ……
「……いつまで泣いておる。ハエに体を通られたぐらいで……情けない」
少女はその形の良い眉を眉間に寄せて、呆れたように一つ溜め息を吐く。
……だってショックじゃない!
今まで私誰にも身体通られたことなかったのに……その第一通過者がハエだなんて!
……せめて人がよかったー! うわああん!
「煩い。喚くな」
うん。ごめん。
…………。
――ねえねえ、暇。ねえってば。………むう
少女が口を閉ざしてしまったので、私が(暇だなー)なんて思いながら空中でバタフライをして一人遊んでいると、少女は懐から瓶を取り出し、その中身を一つ手のひらの上に出すと私の顔の前に差し出してきた。
「そうじゃな。とりあえず、これを食せ」
差し出された手のひらの上には、甘い香りのする赤い飴玉。
霊体であろう自身の身体が目の前の物質に触れられるかどうか少し不安だったが、手を伸ばすとそれは普段飴玉を摘む時のように何の違和感もなく持ち上げることが出来た。
一瞬触れることに驚いた後、目の前の少女の視線に圧されて私はそれを口に放り込む。
……うむ! いちご!
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