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何で僕は早く気付かなかったのだろうか、初めからこの仕事をしていれば…いや、違う。
今、この状況を見れば…
タバコに囲まれた生活、なんて幸せなのだろうかとマサカズ君は思っていた。
人にも迷惑がかからない、よし今日から僕はタバコ屋さんだ!と意気込むマサカズ君だったが…
そこへ年老いたお客がタバコを求めやって来た。
「いらっしゃい」天才の笑顔は天使の笑顔よりも輝いている。
「新しいケントの1mmをくれんかの?」
老人は最近発売したケント、ナノテックを愛煙しているようだ。しかし、マサカズの表情は変わる事無く。
「ありませんよ」
「いやいや、これだよ、これ…」
と、老人はガラスケース越しに置かれたタバコを指差した。
「俺の吸うタバコがなくなるやないかちゃ!」
文字にすると頭が混乱する北九州弁をマサカズは唱えた。だが結局、天才は優しく、老人に甘い為タバコを老人に売り渡し、老人は
「ありがとう」
と店を後にした。
店を開けて夕方を迎えると、沢山の客が来店した。天才の愛嬌、知名度、タバコ好きにしか解らない何かを持っているマサカズ君のタバコ屋は繁盛していた。
そして閉店。店のタバコは半分以上が売れ、店にはセブンスターやピース、メンソール類が残っており、マサカズ君は異変に気付いた。
「待てよ…僕は何をやっているんだ…これじゃ僕がタバコをいっぱい買って只吸っているだけじゃないか…」
そう、客は来るものの売上はほとんど店の中で回っていたのだ。しいて言うならば赤字。
天才マサカズ君の命が尽きるまで、あと
「362日…」
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