裏切り者と始まりの月夜

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「作戦の前日なんだぞ、少し緊張感を持てよ」 ネイトが言い捨てる。 「そういうお前は何書いてんだよ?」 クローゼが言い返す。 「手紙だよ」 「手紙?誰にだ?」 ネイトは机の上でシャーペンを滑らせ、すらすらと紙に何か書いている。 「さてね。」 レティンはチラッとネイトを見たあと、また銃を手で回す。 唐突に、パソコンに向っていたロアがクルリと椅子を回し、陽気な声でいった。 「なあなあ、怪盗ってもっとクールでしょフツー。緊張感もとうぜ」 誰よりも緊張感の無い声で‥‥。 「なあネイト、首尾は大丈夫なのか?」 クローゼはわざとロアには目も向けず、ネイトに問う。 「当たり前だ」 ネイトもロアはスルーし、不適な笑みで答えた。 「ちょっと!無視!?」 と言うロアの声も、誰の耳にも届かない。 ネイト達はロアなど上の空で、会話を続けている。 ロアはわざとらしい程にがっくりと肩を落とした。 そのロアを見て、横でソフィアは手を口に当てて微笑んでいた。 フォルニーアの車でアジトに着いた高来は、“作戦前日のその雰囲気”を眺め、ある意味圧倒されていた。 「‥‥‥‥な、美紀。大船に乗ったつもりになれるでしょ?」 「確かに‥‥‥‥」
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