裏切り者と始まりの月夜

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「うわぁ!!」 「ひゃぁぁ!?」 「おわっ‥‥!」 「何‥!?」 「‥っ‥‥‥!?」 突如銃声が響いた。 ロア、高来、クローゼ、フォルニーア、ネイトがそれぞれに声を上げ、反射的にしゃがむ。 辺りを見渡すと、前方を無表情で見ながら、煙のあがる銃を垂直に上げるレティンが目に入った。 「‥‥てめぇ‥何いきなり発砲してやがるっ」 クローゼが立ち上がり、レティンに詰め寄ったとき、ロアの足元に何か黒い影がポトリと落ちる。 「うわあぁぁぁ!!」 ロアが飛び上がる。 その横で、まったく驚かないソフィア。 ソフィアの視線の先には、胸に手を当てハアハアしているロアがいた。 そのロアを見て、ソフィアが可笑しそうに微笑んでいる。 「‥‥ねずみです。天井にいたので、打ち落としました」 あわてるロアを宥めるように、レティンがつぶやく。 『‥‥‥』 一瞬、アジトに沈黙が走る。 床に落ちたねずみは、ぴくりとも動かない。 レティンはこの廃工場の、薄暗く、なおかつ10メートルはある高さの天上にいたねずみを、ろくに見もせず打ち落としたらしい。
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