裏切り者と始まりの月夜

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高来がそのねずみを覗き込むと、ついさっき見た銃弾が打ち込まれていた。 「‥まあ、こんな感じです」 高来のとなりに、ネイトが並び、そのねずみを指差しながら言う。 「これで撃たれると、衝撃で気絶します。殺傷能力はないですよ。とはいえ、当たりどころが悪ければ死ぬかも知れません」 「へぇ‥‥」 高来はネイトに向き直り、頷いた。 「怪盗の掟は、人を殺さない。悪党にしか盗みは働かない。ですから」 そのネイトの後ろで、クローゼに襟を鷲掴みされ、ひょいと持ち上げられるレティンが見えた。 深夜午前二時、ネイト怪盗団アジトのシャッターが、重々しく開いた。 「さて――そろそろ行くか」 月明かりの照らす幻想的な夜に、ネイトを先頭に皆が繰り出す。 「ああ、とっとと始めようぜ」 拳をならし、どこか楽しんでいるような声でクローゼは言い、ネイトに並ぶ。 「気は抜くなよ。美紀、準備はいい?」 そしてフォルニーアがコートときれいな金髪をなびかせ、クローゼと反対の側に並び、 「ええ」 高来がそのさらに横から姿を見せる。 その眼差しはとても凛としていた。 「‥‥‥行きましょう。敵を待たせてます」 そして最後に、ゆっくりとレティンが姿を見せた。
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